第4章 僕の入学式(後編)

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もう一度、黒板の文字を読み返す。 『ようこそ我が聖蔭高校へ!』 もう・・・その文字が涙ぐんで見えなくなってきた。 周りにバレないように、また運動場に視線を移す。 そっとメガネの内側に人差し指を入れて、目尻の涙を拭った。 ざわざわと落ち着かない教室の雰囲気を、視線をそのままに感じ取っていた。 同じ中学校出身の子たちもいるのだろう。 もうすでに楽しく会話をしているのが聞こえる。 女子たちがここの制服のダメ出しをしていたり、男子たちはこれから始まる入学式がめんどくさいだの、一緒に来た母さんがうざいだの、言っているのが聞こえた。 机に片肘をついて、ゆっくりと教室内を見渡す。 机に座ったまましゃべっている生徒もいれば、数人で集まって立ち話をしている生徒たちもいる。 既に、みんなが仲良くなってしまったかのように思える。 あー、僕はこのまま、孤立していくのかな・・・。 自分が座っている出島が、どんどんみんなから離れていくような気がした。 その時だった。 大きな声が教室に響き渡った。 「あの~、渡会賢一くん、いますか~?」 一瞬、教室内が静まり返った。 かわいい声だなぁ・・・。 ん・・・?渡会・・・僕? 驚いて声のする方を見る。 さっき僕が入ってきた教室前方のドアから、ひょっこりと顔をのぞかせている女の子が1人。 あ、彼女は!! 「あー、いたいた!賢ちゃん!」 センター女子だ! 僕を見つけて手を振ってくれている! 彼女の視線の先を追うように、クラス中のみんなが一斉に僕を見た。 僕は、驚きとうれしさで椅子を倒しそうな勢いで立ち上がり、教室の机と人混みを縫いながら、いそいそとセンター女子に会いに行った。 みんなの視線がヒシヒシと背中に伝わる。 緊張しながら、センター女子の前に立った。 「ご入学おめでとうございます!」 あ~、極上の笑顔はあの時のままだ! 「あ、ありがとうございます。ご丁寧にそんな・・・。」 「制服、似合ってますよ!」 「そ、そうですか?ありがとうございます」 あ~、ホントにかわいい! 彼女の大きな瞳に吸い込まれそうになる。 今日の髪型もポニーテールなんだな。
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