第4章 僕の入学式(後編)

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「もしかして、彼女だとか言うんじゃないよな??」 「そうだったら、今すぐおまえをぶん殴るぞ!」 「なんだよ、あの親しげな態度は?!」 「握手なんかしやがって、こうしてやる!」 そう言いながら、彼は僕の両手を力強く握ってきた。 「あー、唯さんの温もりが~」 「おい、ずるいぞ!俺も!」 「僕も僕も!」 「あの、えっと、ちょっと・・・」 男子たちに次々と手を握られてオドオドする僕。 すると、その様子を見ていた数人の女子たちもやってきた。 「ねーねー、あの人、バスケ部の高瀬唯さんでしょう?」 え?高瀬・・・? 「超かわいい~!超~顔ちっちゃくて、超~目が大きくて~!」 「私、女バス(女子バスケ部)のマネージャーやりたいな~、って思ってるんだ~」 「あ~、いいな~!」 「他の選手の人たちも、超かっこいいもんね~!」 女子たちが、キャーキャー騒ぎ出した。 僕を囲んだみんなから、まだ質問が続く。 「さぁ吐け、なんであんなに仲がいいんだ!『賢ちゃん』なんて呼ばれやがって!」 「くぅ~、うらやましいぜ~!」 「唯さんと同じ中学出身なの?」 「昔からの知り合い?」 「バスケ部なの?賢ちゃんも?」 「い、いや、違うよ。全然・・・」 かなり大げさに両手を振って、全力で否定した。 気付くとクラスのほとんどの子たちに囲まれていた。 センター女子は、こんなに有名で人気者なのか! ちょっと会話しただけで、こんなに目立ってしまうなんて驚きだ! そして『高瀬唯』という名前だったんだ! そういえば、名前も聞いていなかったもんな。 「な~、賢ちゃん、また唯さんと話す時にはさ!俺も混ぜてよ~」 「賢ちゃん!僕も!僕も!」 『賢ちゃん』が、もう浸透し始めた・・・。 僕のことをそう呼ぶのは、母さんや親せきのおばさんくらいだから、なんだかくすぐったい・・・というか、結構恥ずかしい。 あ、僕のことを幼い頃から知っている近所のおばさんたちにも、そう呼ばれてるな・・・。
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