第4章 僕の入学式(後編)

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「俺、山下桔平!賢ちゃんの前の席だよ!よろしくな!」 唐突に自己紹介された。 「僕は、会田翔!」 あぁ、廊下側の一番前の席・・・! 「嵐の桜井君と同じ名前なんだ。よろしく!」 「えー!何よ、その自己アピールの仕方!ずうずうしい!」 女子たちからブーイングされた。 「この自己紹介だとみんなすぐ覚えてくれるんだから、いいじゃんか!」 みんなで大笑いする。 僕も笑った。 「あたしは、蜷川きみか!光ヶ丘中学校出身よ!」 「あ~、ピカちゅうって呼ばれてる、あの中学校か!」 「遠くね?!」 「そうなのよ~、通学に1時間半かかるの~!乗り換え3回あるんだから!」 「マジかよ!」 「俺はその時点で、この学校を受験するのをあきらめるぞ!」 またみんなで大笑いする。 初対面のみんなが次々と僕に(いや、みんなに対しても、だけど)自己紹介をしてくれた。 こんなこと初めてだった。 新学期の初日はいつも、教室の一番後ろの出島席で、ポツンと遠くからみんなを見ていたから。 うれしいなぁ。 こんなキッカケを作ってくれたセンター女子、あ、高瀬唯さんに、僕は心から感謝した。 ピンポンパンポーン ふいに黒板の上に備え付けてある古臭いスピーカーから、お知らせが始まりますよ~!みたいな短い音階が響いた。 「新入生の皆さん、あと10分ほどで入学式が始まります。各クラス横の廊下にて、クラス番号順に整列して下さい。その後、係の誘導に従い体育館へ移動してもらいます。よろしくお願いします」 ピンポンパンポーン それを聞いて、クラスのみんながぞろぞろと廊下へ出る。 今日は、雲一つない晴天で、風もさほど強くない。 廊下北側の窓からの柔らかい日差しも、心地よい。 クラス番号とは、もちろん『あいうえお順』のことだ。 この学校では、そのクラス番号順が男女混合で割り振られていた。 中学校では別々だったから、新鮮だ。 37番の僕の前、36番山下君には、もう『山ピー』というニックネームがついていた。
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