第1章 僕が出会った5人の女の子たち

7/17
前へ
/669ページ
次へ
座ろうと、地味で丈夫なリュックを背中から降ろした瞬間、急な目まいに襲われ、目の前のベンチがぐるっと歪む。。 あれ?! ベンチを正面に見たままの姿勢で、力無くヘナヘナとホームの床に尻もちをついてしまった。 リュックだけが無事にベンチに座ることができた。 その拍子にメガネが地面に落ちたが、拾うこともできない。 自分の足元に転がっていることだけ、確認できた。 暑い・・・。寒い・・・。どっちだ? 意識がもうろうとしてきたのが、自分でもわかる。 頭痛もしてきたぞ。 僕は体操座りをしたまま、頭を膝に付けるようにうずくまって目を閉じた。 めまいがする。 ぐるぐるぐるぐる、自分自身が回っている。 まるで洗濯機の中に入ってしまったみたいだ。 顔を左右にぶんぶん振ってみるが、その回転は止まらない。 逆に悪化してしまった。 こんなこと・・・初めてだ。 どうしよう・・・。 僕は一体どうしちゃったんだろう? 駅員さんの姿も近くにいないみたいだし、大きな声を出して助けを呼ぶことも無理そうだ。 不安と焦りで頭が混乱して、なんだか泣けてきた。 ざわっと足元に何かの気配を感じてそっと目を開けると、1羽の鳩が首を前後に揺らしながら歩いている。 今にも僕の足を鋭いくちばしで突いてきそうだ。 そいつを追い払おうと左足を少し上げた瞬間、体全体がぐわんと揺れた。 うわっ!倒れる! 右側に体が傾いた瞬間、僕の両肩を誰かの両手がグッと支えてくれた。 「大丈夫ですか?」 ・・・かわいい声。 背中越しに、僕の顔を覗き込んでいる。 僕は涙ぐんだ瞳のせいで、彼女の顔がうるんでしまって分からない。 女の子・・・。 中学生・・・僕と同い年くらい? いや、高校生か? まばたきをしたら、僕の目に溜まっていた涙がポロリと頬を伝った。 「どうされました?」 さっきよりも少し大きな声で、やさしく声を掛けてくれた。 でも、答えられない。 顎まで流れた涙がポタリと白いワイシャツの襟に落ちた。 かわいい声の女の子は、そのまま僕の両肩をしっかりと支えてくれている。 僕は甘えるように、もたれかかったまま動けない。 「少し横になります?」 僕の耳元で囁くようにかわいい声が響く。 息遣いまで聞こえるくらいの距離だと気付いたら、急にドキドキしてきた。 気持ち悪さがどこかへいってしまうくらいだ。
/669ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加