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座ろうと、地味で丈夫なリュックを背中から降ろした瞬間、急な目まいに襲われ、目の前のベンチがぐるっと歪む。。
あれ?!
ベンチを正面に見たままの姿勢で、力無くヘナヘナとホームの床に尻もちをついてしまった。
リュックだけが無事にベンチに座ることができた。
その拍子にメガネが地面に落ちたが、拾うこともできない。
自分の足元に転がっていることだけ、確認できた。
暑い・・・。寒い・・・。どっちだ?
意識がもうろうとしてきたのが、自分でもわかる。
頭痛もしてきたぞ。
僕は体操座りをしたまま、頭を膝に付けるようにうずくまって目を閉じた。
めまいがする。
ぐるぐるぐるぐる、自分自身が回っている。
まるで洗濯機の中に入ってしまったみたいだ。
顔を左右にぶんぶん振ってみるが、その回転は止まらない。
逆に悪化してしまった。
こんなこと・・・初めてだ。
どうしよう・・・。
僕は一体どうしちゃったんだろう?
駅員さんの姿も近くにいないみたいだし、大きな声を出して助けを呼ぶことも無理そうだ。
不安と焦りで頭が混乱して、なんだか泣けてきた。
ざわっと足元に何かの気配を感じてそっと目を開けると、1羽の鳩が首を前後に揺らしながら歩いている。
今にも僕の足を鋭いくちばしで突いてきそうだ。
そいつを追い払おうと左足を少し上げた瞬間、体全体がぐわんと揺れた。
うわっ!倒れる!
右側に体が傾いた瞬間、僕の両肩を誰かの両手がグッと支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
・・・かわいい声。
背中越しに、僕の顔を覗き込んでいる。
僕は涙ぐんだ瞳のせいで、彼女の顔がうるんでしまって分からない。
女の子・・・。
中学生・・・僕と同い年くらい?
いや、高校生か?
まばたきをしたら、僕の目に溜まっていた涙がポロリと頬を伝った。
「どうされました?」
さっきよりも少し大きな声で、やさしく声を掛けてくれた。
でも、答えられない。
顎まで流れた涙がポタリと白いワイシャツの襟に落ちた。
かわいい声の女の子は、そのまま僕の両肩をしっかりと支えてくれている。
僕は甘えるように、もたれかかったまま動けない。
「少し横になります?」
僕の耳元で囁くようにかわいい声が響く。
息遣いまで聞こえるくらいの距離だと気付いたら、急にドキドキしてきた。
気持ち悪さがどこかへいってしまうくらいだ。
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