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「あぁ、いえ、あの・・・」
声を振り絞って何とか答えようとする僕。
起き上がらなくっちゃ!
でも、手にも足にも、力が・・・入らない。
まだグルグル回る、目まいの世界から抜け出せないし。
なんだ?本当に僕はどうしちゃったっていうんだ?
またギュッと両目を閉じた。
まだ残っていた涙が、両目から勢いよく落ちていった。
あぁ・・・情けないやら恥ずかしいやら・・・。
「なんや、行き倒れかいな?」
違う女の子の声が、僕の右肩の上の方から聞こえた。
関西弁・・・?
僕を支えてくれている女の子の友達だろうか・・・?
「顔、少し赤くなってるね。症状的には吐き気と頭痛かな・・・?座り込んだのは、めまいでもした?」
顔の真正面、かなりの近距離からまた別の女の子の声がして驚いた。
肩を支えてくれている女の子と同じく、座って僕の様子を見てくれているらしい。
しかも、一瞬で僕の症状を的確に診断してくれた。
「典型的やな。おーい、ちょっと!そこの自販機でスポーツドリンク買うてきたって~!」
関西弁の子が誰かに指示した。
「おごりやないで、兄ちゃん。ちゃんと後で払ってや!」
はい、という代わりに、頭をコクリと下げた。
「ベンチに座らせてあげた方がいい?」
かわいい声の主が心配そうに言った。
「いや、下手に動かして倒れられても困るし、今はこのままで様子を見た方がいいよ」
そう答えながら、彼女は弱々しく力の入らない僕の左手をそっと持ち上げて、落としたメガネを手のひらに置いてくれた。
「レンズ割れてないし、フレームも・・・大丈夫そうだよ」
彼女の両手がメガネと僕の手を一緒に包み込む。
「あ、りがとうございます」
顔がポーッと赤くなったのを気付かれないように、お礼を言いながら折り曲げている両ひざの間に顔をうずめた。
パタパタパタと急いで駆け寄ってくる、二人分の足音が聞こえた。
「そこの自販機じゃ売り切れててさ~。もう一つ向こうの方まで行って買ってきたよ~」
「3本買ってきたけど、足りるかしら?」
少し息を荒げながら、関西弁の女の子に聞いたようだった。
語尾を伸ばす独特な口調の女の子と、少しハスキーな声の女の子。
どうやら僕は今、少なくとも5人の女の子に囲まれているらしい。
なんか、急に緊張してきた・・・。
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