第1章 僕が出会った5人の女の子たち

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でも・・・まだ動けないし、目も開けられない。 僕だけ、高速回転中の地球に座っているみたいだ。 頭痛もひどくなってきた。 右肩の上の方で、プシュッという音がした。 「ほい、兄ちゃん、これ手に持てるか?」 手の発音が『てぇー』と、少し伸びるところが・・・やはり関西人だ。 彼女は、僕の右手に蓋の空いたペットボトルをギュッと握らせてくれた。 左手のメガネ、右手のペットボトル。 こんなふうに女の子に手を握られたのは、いつくらいぶりだろう・・・。 小学校の運動会でダンスを踊った時、同じクラスの女の子と手をつないだっけ。 かわいいなぁ、と思っていた彼女と、ほんの数分だけど手を繋ぐことができて、うれしかった・・・。 あれは、何年生だったかなぁ・・・。 そんなことをぼんやりと考えていたら 「今、口の中、何も入ってないよな?ガムとか飴とか・・・食べてないね?」 僕にメガネを渡してくれた女の子に聞かれた。 きびきびとした口調が少し男っぽくて・・・かっこいい。 「はい」 と、僕は頼りなく答えた。 「ストローがあると飲みやすいんだけど」 「そないなもん、急に出るかいな!ドラえもんじゃあるまいし」 関西弁の女の子の突っ込みが早くて、少し笑えた。 「急がず、落ち着いて、ゆっくり飲んで下さいね」 背中から聞こえるかわいい声に、僕はコクリと頷く。 薄目を開けて、言われた通り、急がず落ち着いてペットボトルを口元に持っていく。 ひと飲みしてから、また目を閉じた。 5人の女の子の視線が僕の口元に集中しているような気がして、すごく恥ずかしかったから。 「飲んでみて気持ち悪くならないなら、そのままたくさん飲んだ方がいい」 僕はペットボトルを口から離さずに頷いた。 運動とは全く無縁の僕は、本当に久しぶりにスポーツドリンクを飲んだ。 こんなに甘くておいしい飲み物だったっけ・・・。 僕の喉を素早く通って、体中に水分が行き渡っていく。 ゆっくり、と言われていたのに、あっという間に1本飲み終えてしまった。 と同時に、またもや右肩の上の方で、プシュッという音。 「ほな、その調子で次いこか~!」 サッと新しいボトルに交換された。 そして僕は自分でも驚くほどの速さで、またもや一気に飲み終わってしまった。
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