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服を脱いで脱衣カゴに入れた。
汗ばんだ長い黒髪が、首筋や背中に張りついて気持ち悪い。
瀬戸君のために伸ばしてあるだけで、私だって、こんな暑い夏に長い髪は嫌だ。
浴室に入りシャワーを浴びると、熱を帯びていた体が心地よくクールダウンする。
と、流れるシャワーの音に混じって、浴室のドアを叩く音がした。
「菜々子~、排水口のところの髪取っておいてよ」
「分かった」
そう答えると、私はお湯の流れ込む排水口を見下ろす。
ゴボッ……
「えっ……」
私はゆっくり屈むと、排水口に顔を近づけた。
ゴボゴボッ……
銀の蓋が被された排水口には、私の物かと思う黒く長い髪の毛が絡まっている。
私は、その髪に手を伸ばした。
髪の毛を取り去ろうと引っ張る。
「……?」
でも、引っ張っても引っ張っても、髪の毛は続いていた。
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