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「お母さんは?」
「まだ」
「そっか」
お母さんは、スーパーでパートをしている。
私は黒の学生靴を脱ぐと、廊下の先にあるリビングに真っ直ぐ向かった。
冷蔵庫の中から麦茶を出すと、一気に飲む。熱くなっていた体が、中からクールダウンした。
「姉ちゃん」
呼ばれて視線を向けると、勇太が右手を差し出してくる。
「髪の毛、落ちてる」
よく見ると、勇太の人差し指と親指の間に、数本の長い黒髪が挟まれていた。
「こんなに良く伸ばせるよな。ただでさえ暑いのに、見てるだけで余計暑苦しい」
「……悪かったわね」
私は、勇太から長い髪の毛を受けとると、すぐにゴミ箱に捨てる。
私の長い黒髪は、家族からしたら、ただの邪魔者らしい。
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