甘し氷菓と、星花火

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「ひゃーっ! つめたぁーい! キィィーンって、こめかみに響くこの感触、忘れてたわぁ。 それに、おーいしーい! みぞれ金時、最高っ」 「ふっ、そんなに旨いか?」 「うん、美味しいよ? まさかお江戸の町でかき氷が食べられるなんて思ってなかったから、めっちゃ嬉しい! 感謝、感謝よ!」 「ははっ! こんなに喜ぶなら、もっと貰えば良かったな。 次があれば、郁さんにまた頼んでおいてやるが、今はこれで我慢してくれ」 喜ぶ私に気を良くしたのか、頭を撫でながら、とらさんが笑みを深める。 郁さんというのは、とらさんのお友達兼、上司の荒井郁之助さん。 加賀のお殿様のところに幕府の御用で出張に行っていて、お土産に雪の塊を貰ってきてくれたの。 もう大喜びで飛びついたわ。 それに、たまたま朝煮ておいた小豆があったから、みぞれ金時に出来たし、大満足よ。 荒井さんからは『少なくて悪いねぇ』って申し訳なさそうに言われたけど、重い雪の塊を運んでくれた荒井さんには感謝しかない。 真夏に溶けないように工夫して持って帰ってくれたんだもの。何の文句もないわ。 「んーん、これだけでも充分よ。荒井さんには、今度御礼するわ。 ほら、喋ってないでとらさんも食べなよ。溶けちゃうよ? ほら、アーンして」 「アーンと言うと、これだな? ――――ん、旨い」 私が差し出した匙からかき氷を食べて、『旨い』と破顔する様に見惚れる。 どの角度から見ても完璧な、眉から鼻に抜けるライン。 精悍な頬は絶妙なカーブを描いていて、時に甘く、時に妖艶な笑みを私に見せてくる。 この、非の打ちどころのない端整な顔立ちのイケメンさん、最初は『アーン』も知らなかったのにねぇ。
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