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「源吾様、お仕立て物を受け取って参りました」
「あぁ、御苦労。例の物は、どっちだ?」
「此方です。小物も全てひと纏めにしてございます」
とらさんのお使いで出かけてた宗次郎さんが戻ってきた。
あっ、そうだ!
「宗次郎さん、おかえりなさーい」
「葵様、ただいま戻りま……うにゃぁっ!?
つ、冷たいです!」
「ふふっ、冷たくて美味しいでしょお? 今のそれが最後のひと口よ?
これ、荒井さんのお土産でね……きゃっ!」
「……おい、葵。宗次郎と俺を同等に扱うとは、一体どういう了見だ?」
「へっ? 何? てゆうか、おろしてよ!」
わあぁっ! とらさんてば、何なの?
同等って、何?
てかてか! 何で私、抱え上げられてんの?
コレ、いわゆる『高い高い』ってヤツじゃん! 何で!?
「今、俺の目の前で宗次郎にも氷を食べさせただろう? 何故だ?
『アーン』は、俺だけの特権じゃなかったのか?」
「……っ」
ぎゃあぁぁっ! ナニ真顔で、んなこと聞いてきてんのっ!?
しかも、ちょい首傾げて下から見上げながらとか、ちょっと可愛いし!
そんで、二十九歳がフツーに『アーン』言ってるし!
でもね?
とらさんって、幕末の人のわりに高身長なのよ。
そのとらさんよりも高い位置に抱え上げられたら、怖いのよ!
「おろしてよぉーっ!」
ぎゅうっと、とらさんに抱きついた。
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