甘し氷菓と、星花火

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「半時(はんとき)は戻ってくるなと、つけ加えておけば良かった」 と、ボソッと呟いて、私をしがみつかせたまま縁側に腰かけたとらさん。 いつも思うけど、166センチの私を軽々と抱き上げたり、抱いたまま移動したり。 とらさんって、腕力あるわよねぇ。 そんなに鍛えてるようには見えないのになぁ。 剣のお稽古って、筋肉つくのかしら? あ、海軍のお人だから操船で鍛えたって、前に荒井さんが言ってたような気がするわ。 なんてことを思いながら、逞しく盛り上がってる上腕二頭筋を着物の上からペタペタと触ってみては、感心してしまう。 「ん? 触りたいのか? 奇遇だな。俺もだ」 「あっ……ん」 とらさんの腕にかけてた手が、きゅっと握られて、身体の後ろ側に回される。 その反動で少しだけ伸び上がったあごを、もう片方の手が迎えにきて。 とらさんとの距離が、ゼロになった。 「すみません! 鍋を忘れましたっ!」 「慌てすぎだ! 馬鹿者っ!」 …………あら。 『優秀な従者』も、たまには怒鳴られるのね……。
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