0人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
止まっている鉄の棒、
空中にとどまるガラスの破片。
呆然としている友人になれるとよかった人たち。
少し悲鳴も聞こえたかな?
彼は、
驚きに目を見開き、口を開け、
ひきつった頬のまま鉄の棒を直視し、
ついでわたしに目を向けた。
怖い顔のわたし、
以前母のその顔を見たことがある。
目を細め、
眉間にしわを寄せ、
対象をにらむ。
左利きだった母は、
左手を上げ、
対象に向けていた。
何かをつかむような形をして、
指をそれに向ける。
むかし楡の枝を持って、
枝でそうしていたからだそうだ。
美しく、優しい母の顔がこれほど怖かったことはない。
その真剣なまなざしは何かを射るようなものだった。
最初のコメントを投稿しよう!