第1章

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男の人にハグと頬にキスをされ、ぐぐっと、押し返している女性の姿が見える。腰元まである大きなキャリーケースは、おおよそ海外旅行といったところか。  なんだか、外国人の隣にいる女性が、ずっと目で追っていた人の後ろ姿に似ている。 隣の男がぴったりと寄り添って、楽し気笑う姿。白い肌と、レオが見てきた高校生のときより、髪が伸びている気がするけれど。 「……菜子?」  そのときツアーの観光客らしき集団が、レオの視界を遮って、再びそこの目を向けても、既に誰もいなかった。 「立花ー、行くぞー」 「あっ、はい! すみません!」  先輩の声で我に返ったレオは、ぱたぱたと小走りで空港を後にしたのだった。
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