第1章

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 ぎりぎり間にあったはずだけれど、否定も虚しく、既に同級生の中では、入学早々遅刻してきた生徒として認識されたようだ。 「電車に乗り間違えて……」 「ははっ、ドジっ子? 葉山さん、だよね? 私、菖蒲っていうの。よろしくね」  にこりと笑いかけるその女の子は、前の席の蓮見菖蒲(はすみ あやめ)。 ダークブラウンのロングヘアーがふわふわ靡いて、大人っぽい印象だ。 遅刻したせいで、クラスメイトを観察する余裕もなく、今さらながら、新たな門出に誇らしくなる。感じのいい菖蒲に声をかけてもらえて幸先がいい。少しだけ安堵した菜子は、菖蒲に笑いかけた。 「菖蒲ちゃん。よろしくね」 「菖蒲で大丈夫よ。みんなそう呼ぶから」
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