recycle2~前田玲奈~

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「それで、渡したいものってなに?」 流れる景色を見るまで走り始めたことに気付けない程、静かに車は動き出す。 「これ……なんだけどさ」 翔は足元に置いたバッグから小さな塊を拾い上げた。 「なに?それ」 薄暗い車内に青白い光が走る。 およそその光は雲の中を走る雷の様で、耳を突く痛々しい音が連続して発せられていた。 「スタンガン……は知ってるよね」 すぐに青白い光は消えたが、玲奈の目には残像が残り、翔の顔をうまくとらえることが出来ない。 「それをどうするの」 目を細めながら、不安げに玲奈は問いかけた。 翔は玲奈の右手を取り、スタンガンを握らせる。 思っていたよりも重く固いその塊に、右手は大きく下に振られてしまう。 「俺の予想ではおそらく、犯人は玲奈ちゃんに接触しようとしてくるはずだ。 今まで無言だった人間が、あんな文章を送ってきたんだ。 それなりの覚悟を決めているのかもしれない」 「だからこれで殺せっていうの?」 玲奈は頭から血の気が引いていくのが分かった。 「いやいや、違うよ。玲奈ちゃんを人殺しになんてさせる訳がないし、 それに、スタンガンじゃ普通の人は死なないよ。 まあ心臓の弱いお年寄りとかだったら分からないけど」 「そう……なんだ」 「使い方は簡単だよ。 ボタンを押して相手の体に当てるだけ。 胸元目掛けてね」 初めて手にした武力に戸惑いながらも、 全てを終わらせるためにと、玲奈は覚悟を決めた。
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