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どれだけ待っただろうか。
緊張で時間の感覚が上手くとらえられない。
何日もの間、座っているような錯覚さえする。
人影の無かった公園には次第に声が生まれ、
いつも通りの姿へと成長していった。
――そろそろ心美との約束の時間。
翔は玲奈から十メートルほど離れた前方の茂みから様子を伺っている。
玲奈からは僅かにその顔と上半身の一部が確認できる程度だ。
気付かれることは無いだろう。
もし仮に玲奈の背後から相手が現れたなら、翔が大きく手を上げ合図を出すことになっている。
玲奈は右手に握られた黒い塊に視線を落とした。
電源ボタンに親指をかけ、誤って押してしまわないよう、強張った右手の力を抜く。
――大丈夫。死んだりしない。
右手から翔へと視線を戻すと、僅かにうかがえる翔の顔が強張っていくのが分かった。
意識を耳に集中すると、背後から微かな足音が聞こえてくる。
空いた左手で胸元をぎゅっと掴む。
目を見開き、翔の合図だけに全てを集中した
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