recycle3~松尾洋二~

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1 「かつ丼定食二人前」 高層ビルが立ち並ぶオフィス街の路地裏に隠れた、築年数の経過した薄汚れた定食屋で遅めの昼食をとる松尾洋二と、同僚の沖谷雅彦は店員に注文を入れた。 「かつ丼定食二人前で三千円は高すぎないか」 無精ひげを生やした沖谷は咥えた煙草に火を付けながらぼやく。 「そうだな。ここ最近の急激な物価高騰は異常だ。 特に食糧の価格高騰は目も当てられん」 空いたグラスに水を注ぎながら松尾が答えた。 一口飲んで、あまりの消毒臭さにそのままグラスを置く。 その姿を見て沖谷も持ち上げたグラスをそっとテーブルに戻した。 「どっかの金持ち達が食糧を投機の対象にして 毎日のようにマネーゲームを行っているからな。 昔は原油だったが、今は食糧。 食べ物は生きるためには無くてはならないものだ、 それが手に入らない貧しい人間が何を起こすのか、 小学生でもわかるって話だ」 定食やの隅に設置されたテレビ画面には、 隣の国で起こった内戦の様子が映し出されていた。 「そんなことは関係ないんだろ奴らには。 むしろ増えすぎた人間がいい具合に減って満足しているぐらいだ。 それに反乱者は全員、即刻人資源にされ更に人口が減らせる。 あの内戦自体仕組まれたものだってことだ」 「それに気付かず立ち上がる民衆も民衆だな」 二人はテレビの画面から、運ばれてきたかつ丼に視線を移した。
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