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会社を出てしばらく歩くと、小さな喫茶店が見えてきた。
手帳を開き、待ち合わせ場所と時間を確認する。
「ここだな」
小さく呟くと松尾はドアを押し、店内へと入った。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか」
身なりの整った初老の男性が深く頭を下げながら確認する。
「いえ、待ち合わせをしていまして……」
そう言いながら店内を見渡すと、窓際の席に座る学生服姿の男が目に入った。
店員に軽く会釈をしながら、松尾はその席へと歩みを進めた。
「君がオンリーホワイト君かな?」
松尾がその名を呼ぶと、慌てた様子を見せながら男は立ち上がった。
膝をテーブルにぶつけ、アイスコーヒーが僅かにこぼれる。
「その名前で呼ばないでくれよ。
それはあくまで掲示板内でのハンドルネームなんだから」
「でもこれ以外に君の名前を知らないしなあ」
「だったら白でいいから。はやく座りなよ」
白はそう言うと自らもゆっくりと椅子に腰をおろした。
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