第1章 日常から非日常へ

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「ふわぁ…おはよ~裕太…何かいい匂いがする~」 眠そうに目を半開きにして、欠伸をしながらティナが来た。 「おはようお姉ちゃん。今、パンを焼いているから少し待ってね。」 パンと言った瞬間ティナの目が輝き出した。 「パン??裕太作れるの??凄い!私、パン大好きなんだぁ!でも、作り方わからないから作れなかったの。」 作り方云々より、料理をわからないのでは?と言いそうになった口を抑え、裕太は読書を再開した。 「簡単な物しか作れないよ。僕だって料理人じゃないし、ご飯だって母さんがいなかったときしか作ってないし。」 「簡単な物でも凄いよ!…ところで、その本、どこまで読んだ?」 裕太の読んでいる本を見て言った。 「んと、もう少しで全部覚えれる。一応全て読んだ。今は要約&暗記中」 その言葉でティナが驚き呆れるのは言うまでもない。 「…異世界人って、頭の作りからまず違うのかな…」 それはただ単に裕太の暗記能力と速読能力が凄まじいだけだが。一応受験生だったので。 そうこうしている間にパンが焼けたみたいなので、裕太は読書をやめ、オーブンを開けた。 「おっ、結構上手く出来たっぽいな。お姉ちゃん、お皿出し…座ってて。」 悠太が指示する前に既にお皿を用意していたようだったので、席に座らせた。 「いい匂い~!熱々の出来立てって、初めて!」 ティナは早く、早く、と言いそうな目で裕太を見つめる。 「そんな事しなくてもパンは逃げないから。ほら、食べよ。」 悠太が皿に盛り付け、席に座った瞬間ティナはすぐにパンを口に入れた。 「…そっか。そういえば、頂きます自体日本独特の文化だしな。それじゃ、俺も食べるか。」 と悠太が食べようとしていた時にはティナはもう既に1つ食べ終わっていた。 「裕太!美味しい!パン屋で買ったやつと比べ物にならない位美味しいよ!」 裕太は凄く幸せそうなティナの顔を見て、作った甲斐があったと思いながらパンを口に入れた。 「ん、ん~…なんか違うな。なんだろう…やっぱ、乳製品がなかったからか?なんか足りない…」 美味しいが、思っていたものとどこか違った。以前地球で作ったのより美味しくなかった。 「これで違うの?…地球ってすごいね。」 おそらく、この世界ではティナの反応が当たり前なのだろう。それ程科学や文化に差があったのだから。
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