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「夏目!」
呼ぶ声に視線を巡らせれば、母屋から出てきた秋月がシャベル片手で見上げていた。
「すごい雪ですね!出られなくなっちゃいましたー!」
窓から大きく手を振って言うと、何を喜んでいるんだと呆れたような声が返ってくる。
「待ってろ、今、道をつけるから……」
「あ、いいですよ。飛び降りちゃいます」
「ばっ……夏目!」
危ないと秋月が制止する暇もなく、勢いをつけた夏目が二階の窓から飛び降りた。ずぼりと埋まった身体が見えなくなる。
「夏目?」
すぐに這い出てくるかと思ったのに、夏目は出てこなくて。慌てた秋月が、夏目の飛び降りた軒下まで積もった雪を掻き分ける。
「なつ……」
ふわりと積もった雪の中。大の字になった夏目が、仰向けになって半分雪に埋もれていた。
「夏目」
屈んだ秋月が、早く起きろと手を引く。が、黒髪を雪に散らせたまま、夏目はぴくりとも動かない。秋月の唇が引き攣った。
「な―――」
引き起こそうと脇に膝をついた秋月が、夏目の肩に手を回す。と、いきなり腕をぐいと引かれて前にのめった。
「うわっ」
叫んだ拍子、口の中に雪が入り込む。
「騙されやすいなぁ」
膝をついたままふるふると頭を振って雪を払い落とす秋月に、上半身を起こしながら夏目がくすくすと笑う。
「夏目!」
心配したのに!と秋月の怒る声。
「ごめ……すみません」
言葉は殊勝だが、夏目の笑いは止まりそうにない。赤くなった秋月が唇を引き結んだ。
「わあっ!」
掌一杯の雪の塊を首筋に投げつけられて、夏目が悲鳴を上げた。
「馬鹿!」
「わう―――ごめんなさいってば!」
笑いながら、夏目が飛んでくる雪を叩き落す。
その時、頭上でざざざと音がして。はっと振り仰いだ二人の上に雪崩落ちてきたのは、屋根からの雪。反射的に秋月を抱え込んだ夏目が、背を丸める。
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