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「今の若いもんは、まったくねぇ」
そう言いながら手際よくスノーダンプを動かす足取りは、口に負けず劣らずしっかりとしている。シャベルで四角く雪を切って、スノーダンプに積み上げて。それを通りの向こうの川まで運んで、流しいれる。
見た目はふわふわと軽そうな雪は、下に行くほど締まって重くなっている。単純作業の繰り返しは、普段使っていない筋肉に堪えた。
「どうした?もうへばったのか?」
道路脇の雪にざくりと突き刺したシャベルの柄に腕をかけて、額に汗を浮かべた秋月が笑いかける。
「や、そんな、ことは」
ないです、という夏目の息は、しかしすっかり上がってしまっている。
「それでもここは目の前に川があるから、楽なんだ」
「あ、そうなんですか」
柳小路の真中を流れる川は、落とされた雪の塊を浮かべながら流れていく。
「雪を落とす場所がない地域は、道路脇に積み上げて、除雪車が来るのを待ってなくちゃならないからな」
「……いろいろと大変なんですね」
見るだけなら綺麗な雪だけれど。その中で実際に暮らすのは、想像以上に大変そうだった。
「でも雪がたくさん降るおかげで、この辺は夏も水不足になる心配がない。悪い事があれば、良い事もあるってわけだ」
「どうぞ、あったまりますよ」
絵蝋燭屋の若奥さんが、一息つく面々に熱い甘酒を配り始めた。秋口に生まれた初孫に、舅の蝋燭屋の主人はすっかり骨抜きになっているらしい。
ありがとうございますと甘酒を受け取った夏目が、ひとつ秋月に手渡した。
雪かきに汗を流す大人達を尻目に、雪遊びに余念のない子供達の歓声が響く。そっち側に混ざりたそうな表情を見せる夏目に、秋月が小さく苦笑を零した。
「さ、もうひとふんばりしますかぁ!」
ひとつ大きく伸びをした夏目が、シャベルを握り直した。
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