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赤と黄色と橙のパレットに
藍色の水が流れ込む。
空の下、二つの人影。
風でなびく君の黒髪を見て、手を強く、握る。
「どうしたの」
とても綺麗だった。
何でもない
空を見上げると、涙が、零れる。
「どうしたの」
身体を、強く抱きしめた。
何でもない
赤子をあやす様な手つきで、僕の背中を優しく、たたく。
風が吹く。
君の黒髪が連れていかれる気がして、怖くて、腕でおさえた。
「大丈夫」
だいじょうぶ。
藍色に染まった。
空の下、二つの人影。
「帰ろう」
手を引く、歩き出す、君。
光の中へ消えていく。
枯れた空と、君と、僕の、黄昏。
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