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「○年です」
高級官僚は肩を叩いて言う
「頑張って」
それを繰り返して首藤の番になる
「君は何年卒業?」
首藤は返答に困る
何年と言うのは東大の卒業年を聞いてるからだ
答えない首藤に仲間が助け船を出す
「警視正、彼は東大ではないんで」
「あそう、それじゃみんな頑張って」
また座って雑談を始める仲間達だが首藤は立ったままである。
それから数年
警察庁
人事異動の貼り紙の前で呆然と立ち尽くす首藤
その姿に同期達の囁く声が響いている
『首藤の奴○県に異動だそうだ』
『あそこへ行ったら簡単に戻って来れないぞ
これで首藤も早々と出世双六リタイアか』
『どさまわりから帰っても経験ポストにつけないからいずれは地方廻りだろう』
『あいつ昔上司の勧める見合いを蹴って今の奥さんと結婚したんだって』
『故郷の農協職員だって、同じ高校の同級生で、大学も出てないそうだ』
『馬鹿な奴だな、学閥が頼れないなら有力者の後ろ盾頼りなのに』
それから数年
本庁内を肩で風を切り歩いている首藤
サングラスをしている
同期の囁く声が響く
『首藤の奴また手柄を立てたんだって』
『ブランクは半端じゃないのに、洞爺湖のサミットをつとめ終われば課長は間違いないらしい』
『三役まで行くかもしれないぞ
ゴマすっとくか』
洞爺湖サミット一週間前
土産を携え所轄の警備課を慰問する首藤である
入って見て驚く
署員達の大半は机にうっぷしている
座ってる署員も目は虚ろである
それでも首藤に驚き直立不動する
「理事官殿(首藤はこの頃警察庁警備局理事官課長補佐事務取扱で、階級は警視正上席で準課長レベルだがサミットでは格下の課長補佐の立場を兼務している、上席の人間が下の役職兼務の場合事務取扱と呼ぶ)失礼しました
みんなシャンとしろ」
「疲れてるならいい
しかし、ちょっと疲れ過ぎてる
どう言う事だ言ってみろ」
警官の一人は言った
「すいません、テロ対策と警備の演習でくたくたで」
「テロ対策は警視庁が担当じゃないのか
署長を呼んで来てくれ」
バツが悪そうにする署員
何かを感じて署長室へ行こうとする首藤を署員が止める
「待って下さい
署長も副署長もいないんです」
「いないって、まさか警視庁の警備を官官接待してるんじゃ」
図星と言う顔をする署員
首藤は怒りを隠せない
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