第十話グランドファーザー

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それほど知られていない地方都市にある古い教会 そのパイプオルガンのある大広間で一人の司祭が会話をしているが相手は見えない 何処からか声がする 「誰が殺せと言った 私はそんな命令はしていない 別に責任逃れをするつもりはないが、私が大人しくさせろと言えば君は殺人しか思いつかないのかブラザー」 「申し訳ありません グランドファーザー 軽薄でした」 「無闇に人を殺す物じゃない 殺すべき人間は自ずと絞られる 簡単だと人を殺していたら、そのうち動けなくなるぞ、まだわからないのかブラザー いいか面倒でも殺す以外の方法を使え、弱みを握る、金を使う、女を使う、ポストをちらつかせる いくらでも方法はあったはずだ」 「しかしそれでは足が」 「足跡はついてもいい、もみ消せばすむ事だ そのもみ消しが出来るのが権力だ 権力を得たいならまず権力の絶対性を信じろ 信じていてこそ己の権力を縦横無尽に使う事が出来る いくら強大な権力を持っていても、その使い方を知らなければ権力はないも同じだ」 「御言葉肝に銘じます」 「それにしても遼子は賢い、これで我々もしばらくは遼子を追い詰める事が難しくなる さすがマザーエリカが自分の後継者として育てようとした娘だ パトリックさえいなかったら私の情婦にして我が野望の手伝いをさせていたのに」 「いずれにしても困った事になりました」 「ほとぼりが覚めれば次原を使い骨抜きにしてみせる」 「その次原ですが 今は我々に従っていますが」 「しかしこちらには切り札がある」 「次原も油断出来ませんが もう一人気になる男がいて今マークしております これを御覧下さい」 壁の一部がさがりモニターに変わる 本居の写真が写る 声は言った 「何者かね」 「本居警部補」 「警部補、下級官吏だな」 「しかしもう次原の暗躍を見抜いております」 「大変な切れ者だが何者だ」 「京都大学卒 もと旧文部省のキャリアです 今はノンキャリア警察官ですが やっかいなのは幼稚園から高校までエリート高校なのです」 「どこの国もエリート達は同じ場所で生育される そして独自の利害集団を作り上げる そこを通過しなければ、つまり普通の集団から出世して来た人間はその数の論理に常に妨害される いずれにしても、そう言った集団の中に身を置いて来たなら政財官の
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