第十話グランドファーザー

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主要人物と独自のコネクションを持っていてもおかしくない この男の年齢が五十と考えるとかつてのクラスメートや先輩は官庁では局長クラス、政界では各党の幹事長、政権では副大臣、財官なら常務クラスの役員、つまり一般の職員なら口も利けない高官と直接面談し情報交換する事が可能と言う事になる 確かに厄介な男だ この男の政財官界に至る人脈を余す所なく調べ上げろ」 「圧力をかけるんですか」 「いや、調べ上げるだけでいい こういう男は下手に何かすると、それを手繰って何かに気がついてしまう 殺害も駄目だ 失敗すれば大きく足がかりを捕まれてしまう」 「馬鹿に臆病になりましたなグランドファーザー」 「ブラザー、私が老いたとでも言いたいのか」 「いいえ」 「君にはまだ私の代わりは務まらない」 「わかっています 脅すぐらいは宜しいでしょうか」 「本居の力量も知りたいし、許そう 結果は逐一報告してくれよ」 ブラザーと呼ばれた司祭は部屋を出た 吐き捨てるように言った 『老いぼれめ、お前がエリカを後継者にしたい事はこっちはお見通しだ お前の野望は俺がついでやるよ お前を始末してな』 新千歳空港 チェックインカウンター近くのエリア 搭乗手続きを終えた本居が自動販売機でコーヒーを買っている 声がする 「失礼ですが警視庁の本居刑事ですか」 見ると若い男が立っている 「はい本居は私です」 「ではこれを」 若い男は着ているジャケットの内ポケットに手を入れた 『刺客かも』 本居に緊張が走った 男は厚めの封筒を本居に押し付けるように渡した 本居はほっとしたが意味がわからず聞いた 「これは一体」 その時本居は封筒の裏に寺田と言う名前が書いてあるのに気がつき戦慄した。 「まさか副教区長」 本居は男に事情を聞こうとしたが男の姿は人ごみに消えていた。 本居は走って人ごみの中に入ったが、いくらまわりを見ても男の姿は消えていた。 本居は思わずその場で封筒を開こうとしたがやめてトイレへ飛び込んで中を開いた 中にはかなりの数の便箋が入っていた。 本居は震える手でそれを読み始めた 『刑事さん、私はあなたに多くの事を隠しておりました これから私が知っている事の一部をあなたにお知らせします
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