第二話 孤高の刑事&ボーイミートガール

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一台のオートバイが新宿両国線を千代田区に向かって走っている 風を切って車を縫って走っていたオートバイが停止する ライダーが慌ててヘルメットを取った 少し長めの天然パーマの髪が風になびいて少し童顔の甘いマスクが現れる 丸めの顔に尖った顎少し広い額、濃い真っ直ぐな眉毛整った目鼻立ち、上品な口。 身長は178センチぐらい、中肉中背色白である ライダースーツを着ているが、その下には背広を着ているのがわかる その青年は優雅な容姿に似合わずかなり慌てて狼狽していた。 ヘルメットを急いで取ると下に落とした 下に落ちたヘルメットは近くに転がり止まる 青年は慌ててヘルメットを取ろうとするが身体が凍りつく ヘルメットにスズメ蜂が止まっているのだ どうやら頭付近にいたスズメ蜂を巻き込みヘルメットを被ってしまったらしい、走り出した後顔の周りで蜂が蠢いていた時は生きた心地はなかったと想像出来る とりあえずヘルメットは脱いだが蜂はヘルメットから離れる様子がない 下手に振り払うと襲って来る事は明らかだから青年は蜂とにらめっこするしかなかった。 ノーヘルで乗っては行けない理由が青年にはあった。 もし白バイやミニパトに捕まれば思いもかけない事になりかねない 反則金や行政処分程度ではすまない事情が彼にはあった 第一、切符など切られていたら約束の時間に間に合わなくなる。 青年にとって数年待ったチャンスだった これでダメになることはないにしても、どんな物も最初が肝心である 最初から遅れる人間を誰も信用しない ましてや厳しい勤務につく身なのだ こうなったら蜂に立ち向かうか しかし、相手が蜂、それもスズメ蜂となれば、ごく稀だが命を奪われる事がある もちろんその場ですぐショック死する事は少なくとも、病院行きになったり入院になったりする例はけして少なくない 青年は小心な所もあるせいか、踏ん切りがつかないようだった しかしついに、覚悟を決め蜂に立ち向かった その時だった 蜂が青年の方に突撃して来た 青年は寸前で蜂をよけた 蜂は額すれすれの所を飛んで行った 『しまったバッグを許した』 青年は頭を庇って縮こまった。 しかし襲って来る様子はなかった 青年は恐る恐る後ろの上空を見た トンビが輪を描いて飛んでいた。 青年は深く溜め息をつき、ヘルメットに手を伸ばした
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