第十話グランドファーザー

10/12
前へ
/336ページ
次へ
「エリカ、もしかしたらメアはパトリックの最後を見たんじゃないか 考えてみれば、草刈は一度メアを寄宿舎から連れ出している可能性がある その時パトリックの最後を見たとしたら」 エリカは言った 「そんなバカな まだ十代だったのよ おかしくなってるはず 何もなかったような顔をしてたのよ」 「それがおかしいんだよ、本人達は秘密にしていたがパトリックとメアが恋仲だったのは間違いない だったらパトリックの最後は知らなくても動揺は顔に出てるはずだ それに、あの時パトリックの遺体は何故ナイフを握ってなかったんだ クソ、遺体の処理に気を取られてナイフの事まで気が回らなかった 俺とした事が」 「じゃあメア、赤城遼子はパトリックの最後を知っていながら何十年もの間素知らぬ顔で復讐の機会を狙っていたと言うの もしそうだとしたら、この数十年あの子はどんな気持ちだったんだろう 心が痛むわ」 「エリカ、お前ほど冷静で冷酷な女が、ことメアについてはまるっきり女 いや母親だ」 「似てるのよ 性格も それに私と同じであの子も実の親に気味わるがられて見放されているの」 「だがなエリカ、メアはパトリックの美しさに魅入られ入って来たような連中とは違う、こういう世界にこそぴったりの女だ その女が数十年の恨みを晴らそうと牙を研いでいる お前も本気で戦わなきゃやられちまうぞ」 「わかってるわ」 「あの女、最近パトリックの死の真実を知ったような事を言って来たが、そのおかげで俺達は誰が裏切り者なのか、裏切り者探しで互いに疑心暗鬼になっている それはメアの策略だ 疑われて酷い目にあった奴に接触して自分の方に引き込もうとしている 裏切り者の寺田に近づいたのも、単にパトリックのパートナーだったからではなく、寺田が組織に恨みを持ってるからだ 寺田はパトリックに対する罪悪感が強い もしかしたらメアには秘密を話すかもしれない もし俺達には絶対口を割らなかった寺田が、俺達さえ知らない秘法の完全な情報を握っていたとして、それを寺田が復讐に燃えるメアに教えたら俺達もグランドファーザーも、いやローマ法王だって歯が立たない それほど怖ろしいんだ あの聖痕の秘法は」 ブラザーは立ち上がった 「だからやむおえなかったんだ寺田を殺すのは、それをグランドファーザーは俺をガキ扱いしやがって、俺だって人殺しが厄介なんて、
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加