11話ヒトラー

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軍人側は、こんな意味のない情報は保護する必要はないし、その上世の中に漏れてしまうと大衆を惑わすだけだから廃棄してしまえと主張する 一方学者達を中心のインテリ系グループは、一見真偽不明だが、必ず有益情報のヒントがあるはずだと情報保護と管理を主張する この問題を巡って2つのグループは激しく対立し反目し始めてしまう 政府首脳達は当面役に立たない情報のために軍部が混乱する事に頭を悩ます 国内で情報管理はトラブルから出来ない しかし情報を廃棄する事はインテリ系将校達の反発を招くためアメリカもソ連邦も、自分達の掴んだ情報を管理に困った挙げ句分断されたそれぞれの陣営に返す事を決意する 早い話が当面役にも立たないが軍が対立する情報をドイツに返して厄介払いしたかったのだ ドイツに返された情報は西側東側のドイツでそれぞれ管理される やがて本格的に冷戦が始まり両陣営ドイツは、その影響を受ける お互いの情報戦の中で、全ての情報はそれぞれの政府に管理され厳重な秘密主義が貫かれ人々の目に情報が触れる事はなかった やがてペレストロイカによりドイツが統一されドイツ全体の秘密主義が壊れる 情報の公開が自由になる しかしあまりにも時間が経ちすぎた 時間の経過により証拠のほとんどは残っていない 資料の真偽を確かめる手段はない まして荒唐無稽な一部の情報は歴史家達も研究者も何の興味も示さなくなっていた。 かくして貴重なナチスに関する将校達の証言は、そこから何かを発見する事もなくドイツ連邦公文書館の特別室に埃をかぶって放置されたのだ。 調べに来る奴はオカルト雑誌の記者か小説家や漫画家だけ、たまにテレビ関係者も来るが、閲覧して行くのは計画倒れと言われた要塞都市やUFO計画など俗受けする話のみ 膨大な資料のほとんどが、まだ誰の目にも触れていない。 「もしかしたら先生は、前にもそれについて調べた事があるんじゃないですか」 「ああ、もう随分前になるが、資料館の近くに住んで俺は毎日のように通ったよ」 「何かを掴んだんじゃないですか」 「掴みかけた」 「掴みかけたって」 「途中で止めたんだ」 「理由がおありなんですね」 「聞かないでくれ今はまだ話したくない」 「わかりました しかし別の質問をさせて下さい そのあなた何故今頃になって再びドイツに来る事を承諾したんですか」
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