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に止まった
入谷は小走りに走って直立不動になった
「音田警部殿ご苦労様であります」
運転席の男が出て来ると入谷は敬礼した。
音田と呼ばれた男は六十ぐらいの風貌で大柄である
スラックスの上に作業着のようなジャンバーを着ていた
音田は敬礼しながら言った
「入谷警視、殿はないだろう
それに敬礼するなよ
部下が見てるだろう
先におろしたまえ」
「ではお言葉に甘えて」
入谷は敬礼を下ろした
「入谷署長、階級にあった振る舞いしてくださいよ
ここは酒の席じゃないんだから」
「しかし本店はしりませんが所轄は先任(警察官に任官した時の階級の上下関係)を絶対視します、それに教えをこうた方ですから」
「まあ、出世が早いからって先輩をおい君呼ばわりする輩よりましかも知れないが、どうもワル崩れの男は堅苦しくていけないわ
まあ座れ」
音田は隣のパトカーのボンネットに座り入谷を誘った
入谷は少し躊躇したが並んで座った
「(あー寄付してくれた会社に悪いな)
相変わらずですね」
「どう言う意味だ
まあいい
君と本居は俺の数少ない教え子だ
ほんの一時期現場から飛ばされた時だったからな」
「今年定年ですか」
「まあな、ところで厄介な奴をくわえ込んできたな」
「草苅の事ですか
でも俺が助けなきゃ東京湾の底です」
「実は赤城遼子関連だが、上は帳場を立てる(捜査本部を設立する)のに、ここに至って二の足を踏み始めたようだ」
「しかし各所轄には方面本部から捜査員の人選を急ぐように通達が来てます」
「もちろんこのまま指をくわえて見てる事はないだろう
赤城遼子が殺害されて、浮かんだりすりゃあマスコミ世論から袋ただきだ
だが簡単には記者会見はしないぞ」
「警察組織の面子が掛かってるのに、随分弱気ですね」
「表向きは赤城遼子拉致事件の具体性が欠けるため本部事件(捜査本部設立の中核となる重大事件)としての性質が弱い事だが
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