パトリック問題

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「しかしもし赤城遼子が被害者でなければ状況は一変するんじゃないですか」 「被害者じゃない 加害者とでも言うのか」 「騒動を赤城遼子が仕組んだとしたら」 「何故仕組む 動機は何だ 売れないお笑い芸人じゃないんだ トップ女優になんのメリットがある」 「それを調べるために本居は北海道に行ってたんです 今度の失踪に関連があると思われる赤城遼子のデビュー前の空白の数年間を追ってです そしてネタを持って東京に戻って来たんです 取り調べをお願いする草苅の自殺も本居は読んでました 草苅は赤城遼子の空白の数年間を知っています 草苅は事件の突破口です」 「この事件について調べた事は上に上げたか」 「それを悩んでるんです」 「しばらく上げるな」 「しかし草苅の拘留の延長とかで上の力を借りなければ」 「拘留の延長は、責任を持って検事にたのんでやる 草苅は必ず俺が落とす しかし帳場が正式に立つまでここで調べた事は絶対上に上げるな」 「何故ですか もみ消せとでも」 「そうじゃない 上は厄介なこの事件から、もう身を引きたがっている オームの問題が絡んで来るのを恐れてる しかし今の段階では赤城遼子に何かあれば責任問題になる そんな時にだ 赤城がこの事件の仕掛け人だと言う疑いに充分な証拠を手に入れれば、赤城はもはや犯人と同価値であり、警察が全力を上げて保護する対象ではなくなる そうなったら警察庁は赤城遼子に責任のすべてを押しつけ、この事件からさっさと手を引く そうなったら俺達の捜査もお手上げだ」 「しかし事件の真実を明らかにする事が帳場を立てるには必要じゃないでしょうか」 「いや違う、世論の圧力に屈するのを待てばいい、警察は世論には弱い物だ 世論の盛り上がりから逃れるため、マスコミとの協定成立すれば必ず上は帳場を立てて来る そうなれば、こっちのもんだ 一度帳場を大きく開かせてしまえば警察庁は簡単に矛を収められなくなる 例え赤城遼子がこの事件を画作してようが、オームの問題に人々の耳目が集まろうが同じだ それまでは赤城遼子が加害者側にいるかもしれないと言う情報や証拠は方面部長にも刑事部長にも絶対に上げるな、わかったな」 入谷は大きく頷いたあと言った 「わかりました よろしくお願いします」 「全く、この定年間際の老兵になんて問題を持って来るんだお前ら さすが俺の
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