パトリック問題

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「じゃあ遼子さんの親に聞くんですか」 「それもダメだ、出来たら親にも悟られるな 理由は後で説明する」 入谷が言った 「元ヤン、ヒントだけでも教えてくれ 何を疑ってる」 「署長、今回の事件は赤城の失踪に手を貸した奴の中に草苅と赤城の両親は間違いなく含まれるだろう 草苅の方は赤城命と言う理由で協力しているからわかるが、赤城の親は何故娘に手を貸すんだ 娘の失踪騒ぎに手を貸す両親なんかいないだろう?」 「確かに、じゃあ何故?」 「娘を幼い頃追いやった弱みがあっても、こんな事にまで力は貸さないよ」 「じゃあ何故両親は赤城に協力する?」 「その点はな、今は言えない」 「おいモトやん、俺を信じられないのか」 「俺達の周りに監視 はないと思ってるのか 悪いがギリギリまで捜査の事は俺の頭の中で構成する 煮詰まったら協力を頼む」 「元ヤンいくら何でも虫が良すぎるんじゃ」 本居はカバンの中から封筒を出した 「それがさっき話した寺田副教区長が俺に残した信書だ 寺田さんは自分がパトリックを置き去りにして逃げた事を苦しみ続けた そして命を狙われる事を覚悟で俺に情報を提供してくれた 何故だと思う すべてはパトリックへの償いだ 寺田さんはかつてのパトリックの恋人シスターメアの暴走を抑え、彼女を保護してもらいたいと俺に託したんだ その思いを考えると俺は警察官僚達が適当に手をうつのを決して認めるわけには行かない」 入谷は封筒から分厚い寺田の信書を出し読み始めた そのうち目頭を熱くして行った 真壁も入谷がテーブルに置いた信書に目を通した。 取り調べ室では草苅と音田の曲者二人が対峙していた。 音田が言った 「弁護士が来るまでは?」 草苅が答えた 「黙秘権を行使する」 「で、いつ来るんだ 先生達は」 「もう来るだろう」 音田は自分のケータイを出して草苅に差し出した 草苅は言った 「なんだ」 「直接電話でよびだせよ、どうせ弁護士なんてアゴで使ってるだろうがセレブの旦那」 草苅は分捕るようにケータイを取った 草苅の顧問弁護士は大半は民事のベテランだが芸能界と言う特殊な世界で様々なトラブルが予測されるため刑事専門の弁護士もいる 大概はヤメ検かヤメ判だ 草苅は直通のケータイを聞けるほどの上得意なので弁護士には直通で電話をする
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