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副検事は久華が去ると大急ぎで電話をかけようとしたが、ドアが少し開き隙間からナイフが飛んで来て副検事の横をすれすれに柱に刺さった
久華の声がした
「検事正にチクるのは3分我慢してくれ
それですべて片がつく」
ビルの最上階では男の悲鳴が響いた
しかしチンピラはいなかった
久華もいなかった
久華はビルの柵に捕まり片手だけでぶら下がっていた。
もう片手はチンピラの片手をしっかり掴んでいる
チンピラは恐怖で狂わんばかりの状態で失禁している
「助けてくれ
何でも言う事を聞くから」
「なんだ、絶対歌わないって言ってたじゃないか」
「上げてくれ~」
「バタバタするな
俺の手が切れたら二人で仲良くあの世行きだぞ
おっやばいな」
「どうした」
「四十肩かな、柵つかんでる手が動かねー」
「なにー」
「一度はずして掴み直せば直るかも」
「やめろー」
「心配するな
俺はてめえら外道といつでも心中してやれる男だ
それじゃあ
あらよっと」
久華は柵を掴んでいた手を離した
二人は一度にずれ下がった
しかし落下する瞬間久華はビルのヘリに指を掛けた
そして指の力だけで二人分の体重をものともせず体を上げて、チンピラを掴んでる手を自分の肩口まで上げて言った
「片手がふさがってるんで君が柵をつかめ、いいな」
そう言うと久華はチンピラの腕を掴んだ手を上げて行った。
やっとの事空いてる手で柵をチンピラが掴むとチンピラは片方の手が開いていて久華がいない事に気がついた
慌てて、もう片方の手で柵を掴もうとしたが、柵を掴めず再び宙ぶらりんになりかけた
その時強い力が柵の上からチンピラの体を引き上げて屋上に放り出した
見上げるとそこには息一つ乱していない久華がいた。
チンピラは感極まって泣きそうになった
久華は急いでチンピラの口をふさいだ
その時屋上に駆け上がって来る音が聞こえた
深見検事正と若い山岡検事だ
深見は言った
「久華検事、また無茶をやったのか?」
「これはこれは、元後輩の深見検事正殿
わざわざおでましにならなくても」
「君がこうゆう事をすぐやるから」
「誤解ですよ、私はね、ただ部屋は空気が悪いから、ちょっと空気を吸ってもらおうと、お連れしただけで
そしたら彼が過って足を踏み外して落ちそうになったのを、間一髪で」
「どうやって、この柵を踏み外すんだね
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