パトリック問題

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そこの君、久華検事に突き落とされたんだろ 正直に言いたまえ」 チンピラは何か喋ろうとした、しかしその時久華の言った言葉が頭をよぎった 『俺はてめえら外道といつでも心中できる人間だ』 途端に身体に戦慄が走った チンピラは何も喋らず下を向いた 深見検事正はなおも追求した。 「恐れる事はない 君は久華検事に突き落とされたんだろう」 チンピラは力なく首を振った 久華は言った 「俺の言った通りだな兄さん」 チンピラは力無く頷いた 深見検事正はチンピラに迫った 「うそを言うな」 チンピラは奇声を上げて暴れた 山岡検事が検事正を止めた 「もう無理です、壊れちゃいます」 久華は言った 「それじゃ俺は下でコーシーでも飲んで来ますから、早く監禁場所を歌わせて下さい」 久華は悠然と帰って行った 「くそ、またか」 深見はくやしそうに床を蹴った 音田は取り調べ室の洗面台でうがいをした。 音田は言った 「もうこんな時間だ 会社の事が気になるだろう」 「役員が何とかしてくれる」 「遺書でも置いてきたか 今頃大騒ぎだろう 会社にかけて見るか」 「心配ない、トップとして、危機管理は常に心がけて来た 俺がいなくても組織は動く」 「さあどうかな、今頃権力争いが始まってるかもしれないぞ」 「もうどうでもいい」 「そうだよな、一人の女のために、タレントも社員もみんな捨てたんだもんな たいしたもんだ」 草苅は目を瞑った 音田は続けた 「あんた家族は」 「なんでそんな事を聞くんだ」 「まあいいじゃねえか 結婚はしたんだろう」 「人並みにな、何回か」 「子供は」 「生まれなかった」 「ははん、それで」 「何がははんそれでだ 言っておくが、俺は遼子を娘として見た事は一度もない いつも女として見ていた」 「事務所の社長がタレントを女として見ていた よくそんな事が平然と言えるな」 「指一本触れてない だからファンに対する罪悪感はない」 「何故だ、あんたみたいに容姿に恵まれ、金も権力も持っている男が、別にあの女じゃなくても良かったんじゃないのか 自殺までして一途に尽くすんだ」 「俺は自殺などしていない 公務執行妨害を認める だから久華に立件でも何でもさせてくれ」 「そうか、認めるか、そいつは困ったな」
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