パトリック問題

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「私はそう言う意味ではなく、人々の中にある闇の部分に光を当ててしまうんじゃないかと考えている だからその秘密を公にさらされたくないため伝承がタブーになってるんじゃないだろうか」 「人々の闇」 「歴史の闇と言った方がわかりやすいかな」 「そんな先生が何故協力してくれる気になったんですか」 「真実探求の興味だよ 私も学者だから、その誘惑に耐えられない 科学者が悪いとわかっていながら危険な研究をするのと同じだ それに曾祖父の偉業を完成させるのは子孫の私しかありえないと自負している」 「本当にそれだけですか」 「悪かったね、俗っぽい動機で」 「先生の考えがどうであろうとたとえこの世がどんなに混迷しようと私は謎の答えを世間に公表します」 名高はむっとした顔になって言った 「それはジャーナリストとしての義務感か」 「いえ、この世には人間の想像を絶する闇が存在する その事をしらなければ私のように不意打ちに会います」 「目の前で失踪した家族の事だね しかし君に聞きたい その闇が人智では立ち向かえない闇だとしても、その事を知るのは幸福か」 「アメリカのグランドキャニオンの下には噴火すれば世界がどうなるかわからない火山が眠っている そしてその火山はいつ爆発するか想像もつかない それでも人々はその上で生活してます 人間は恐怖を飲み込める強い動物です だからこそ全てを知る権利がある 自分を破滅させる者、世界を破滅させる者がなんなのか 知らされず死んで行くのは誰だって嫌なはずだ」 「わかった勝手にすればいい」 今井は思った 『先生が我々に協力したのは、誰よりも早く謎を解き、その謎を封印してしまおうとしてるからじゃないだろうか これからの先生は油断が出来ない 何としても先生より先に秘密を手に入れなければ どちらが正しいかは歴史が判断すれば良いことだ 先生は人智が及ばないと言う言葉を使うが、人智が及ばない事を何故人である先生が処断しようとするのだ それこそ思い上がりじゃないだろうか 人類の運命は一人の個人の良心で決めるものじゃない みんなで決めるべきなのだ そのためには万民の目に触れるように報道しなければならない」 名高は言った 「もう少しだ 歩こう」 二人は歩き出した しかしさっきのようなのどかな雰囲気は消えていた。
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