パトリック問題

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しばらく行くと黒い大きな鉄の扉があった 名高は言った 「ついたぞ」 「この奥が資料室ですか しかしこの異様な模様の扉はどこかで」 「ほう、意外に博識だな この扉の名前は地獄の扉」 「地獄の扉ってまさか」 「作者は天国の扉と同じギベルティだ」 「ギベルティは地獄の扉も作ってたのか」 「ギベルティは最初天国と地獄の扉を一つにして作った 天国と地獄は表裏一体紙一重 善と悪とは紙一重 ギベルティは禅に通じる無常感でこの扉を作ったらしい、しかし教会が拒否したので扉は二つに分け表の天国の門だけが世に出ることになった ギベルティはそれでもあきらめ切れず完成させた それから年月が経ち近代になって危険な美術コレクターがこれを見つけた そいつの名前は」 「アドルフヒトラーですね」 「その通り これを第三帝国の墓場の門に使うとはドイツ人もなかなかシャレがわかる」 「それじゃ第三帝国への道行きとシャレましょうか」 「むさ苦しい男同士で史上最大の狂人の描いた妄想の世界道行きとシャレこむか」 「と言ってもこのドアかなり重そうですね」 「開けてみたら?」 今井はドアのノブに手を掛け押して見た ドアはびくともしなかった 「押してもダメなら引いてみなか あれ?」 ドアはびくともしなかった 名高は笑った 「笑ってないで手伝って下さいよ」 「二人がかりで開けなきゃならないドアなんてないよ ちょっとどいて」 名高は今井を退かせるとドアの上の方に手をかざし言った 「神よ、我を導きたまえ」 するとドアは下に沈み始めた 「しっ沈んでる」 「地獄の扉らしく奈落の底へ堕ちて行くんだ」 「呪文までいるんですか」 「ジョークだよ センサーが反応すると沈む仕掛けなんだ」 「センサーって」 「足元にある」 「つまり動きの鈍い単なる自動ドアですか」 「普通の自動ドアは沈まないがね」 入ると今井はいきなり声を上げた 「でかい」 それは巨大な鍾乳洞を使って作られた資料室と言うにはあまりにも巨大な書棚群だった 「神聖ローマ時代に作られた巨大な地下神殿を使って作ったそうだ」 「これでどうやって探すんですか」 「だから私は数年毎日通いつめたんだ ポイントはわかっている心配するな 最もあの後も次々に運びこまれたようだが」
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