パトリック問題

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内容は土手越しに、河原に設けられた草野球グランドでプレイしている姿を遠景から描いた物だった 真壁は質問した 「赤城遼子さんはどんなふうに見てたんですか」 「普通でしたよ 写メとか、そんな事はしなかった ただ」 「ただ、」 「このグランドもうないんですよねって言ってました それからハンカチを目に当てました」 「涙を拭った」 「うしろから見たんで、そこまでは」 「この近所なんですか土手」 「ちょっとありますけど」 「十年ぐらい前までグランドがあったんだ そういや水害が多い年代だから施設ダメになったのかな」 「十年前じゃないですよ」 「でもサインの日付が」 「描いたのはその辺でしょう、しかしグランドは二十五年ぐらい前に都市計画で廃棄されました」 「それじゃ十五年描き続けたんですか」 「あの絵がそんな大作に見えますか はい、激辛サンドイッチとココナッツサイダー」 「あっすいません」 真壁はカウンターについた マスターは言った 「随分ご執心ですね 今話題の人だからですか 案外年上好きだったりして」 「マスターあんまり そう言う話題は」 「そいだったね つい油断しちゃって」 カウンターの反対の方からグループの一人が声をかける 「マスター、オーダー揃ったんですけど ちょっといい」 「あーごめんごめん」 マスターはカウンターの反対側に行った。 真壁はちょっとほっとした。 他の客にバレてなくて良かった その時真壁は気がついた 土手のスロープに簡単な観客席が設置されてるんだが、その観客の中に若い女性の二人づれがいたのだ 若いと言う表現は一人には相当するが、もう一人には幼いと言う言葉の方がふさわしいだろう 一見見ると少し年の離れた姉妹と言う感じである 少女と考えられる背の小さい女性はジャージのような服を着ており、その背後にゼッケンを書くような白い布が張ってあり、そこに文字のような物が書いてあった 真壁にはその字が赤城と書いてるように見えたのだ 真壁はそれを確かめようとサンドイッチとサイダーを持ったまま絵に近づいた。 その時マスターからクレームが来た 「マッ、お客さん、オーダー持ったまま絵に近づかないでよ タバスコついたらどうすんの」 「あっすいません」 真壁は急いで絵から離れた」 「わかりゃいい、きつく言って悪かった 画伯って人が
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