パトリック問題

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描いた絵じゃないけど、うちのために一生懸命描いてくれた絵だから汚したら申し訳ない」 「当然です、軽薄でした すいません、もう二度といたしません」 真壁は自分が気になる事をおずおず切り出した 「ところでマスター 画伯ではないと言いましたが、この絵を描いたのは無名の絵描きさん」 「まあ絵描きと言うほどじゃ 普通のサラリーマンで写真が趣味の人なんですが十年ぐらい前に会社を定年になって今まで撮りためて来た風景写真の中から選んで絵を描いていたんです」 「えっ、するとこの絵には元の写真があるんですか」 「だって、その絵のサインは十年前でしょ、そのグランドは25年前になくなってますよ、写真見なきゃ書けないでしょ」 そのとき真壁は閃いた 『もしネガがあるなら、あの名前の部分を拡大出来るかもしれない』 真壁は言った 「この絵を描いた人と連絡とれますか?」 草刈は相変わらずだんまりを決めこんでいた。 音田は無理に取り調べをしなかった 音田のケータイに着信があった 音田はとって返事をして草刈に差し出した 「顧問弁護士からだ」 草刈は不快そうにケータイをとって言った 「もう来なくていい あんた首だ」 草刈は電話を切ると音田に突っ返した 音田は言った 「いいのかい」 「狂犬相手に半端な弁護士が役に立つか」 音田は笑った そしてスマフォを取り出し一枚の少女の写真を見せた 音田は言った 「いい女だろ」 「ああ、孫か」 「姪だ、この顔見覚えねえか」 草刈はじっくり見た 「すっぴんだが、いずみ里香」 「そうだよ、乱交パーティー参加で芸能界を追放になったアイドルいずみ里香だ」 「あんたの血が入ってるわりには、なかなかの女だが アイドルには向かなかった」 「それはあんたらプロダクションがわの言い訳だろ ファンは違うんじゃないのか」 「違う?」 「出来の悪い姪を庇うわけじゃないが ファンはアイドルをそんなに綺麗だと思っちゃいない こう言うダメな部分をひっくるめて受け入れようとしてるんじゃないのか? ましてや芸能人の普通の恋愛まで管理しようなんて、まだまだ古いんじゃないのか頭が」
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