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草刈は笑いだした
「あんたら警察の正義や倫理は所詮平均人を基準にしている
俺達芸能界の相手は普通の人間ばかりじゃないんだ」
「普通の人間ばかりじゃない」
「山田太一の男達の旅路の中に車輪の一歩って名作があるのを知ってるか」
「鶴田浩二の出たやつか、あまり知らないが」
「シリーズ物で、特攻隊崩れの警備会社の管理職が主人公なんだがそのエピソードの一つで、若い警備員兄弟がふとした事から若い身体障害者の一団と触れ合うと言う話があった
古すぎる放送で随分経ってからの再放送でみたんだが、その中に、今性格俳優の斎藤洋介が当時としては、かなり過激なシーンを演じている」
「過激?」
「暴力とかじゃないんだが、あの当時の放送コードだと、かなり批判を覚悟にオンエアしたと思う
斎藤洋介のモノローグのように話が入るんだけど、斎藤洋介の若者がある時母親にこう言うんだ
トルコへ行きたいと」
「風俗店と言う事だな」
「母親は最初息子が何を言いたいかわからない
海外旅行の話と勘違いする
覚えてないが斎藤の家は普通の家庭より貧しい感じがした
話が通じない母親に、斎藤は説明するんだ
まだ俺はガキだったが、マセてたんで可哀想だと思った
だってそうだろ、二十歳ちょっと過ぎの若者って格好つけたい年頃だよな
それがさ、女を買う金を貧しい母親にせびるんだぜ
俺こんなんじゃ持てないし、結婚もできそうもないってさ
だから一度ぐらい女を抱いてみたいって
母親は息子が可哀想になっちゃって
いいよ言ってきな
ああ言う所はいくらいるんだいって
そういいながらも金の工面どうしようかって顔に出てた
その時見かねた親父が奥から言うんだ
十万も持たしてやれって
いいかチップをケチるんじゃないぞって
息子の一世一代に、有り金はたくつもりなんだ」
「それで、その、上手く行ったのか」
「ミッションインポッシブル」
音田はため息をついた
「当時はバリアフリーなんて概念なかったものな」
「青年は一世一代のイベントのため、似合いもしない背広を着込んでめかし込んでいた。
普段は仲間とつるんでるんだがさすがに自分だけ女買うのに、引き連れて行くわけ行くまい
歌舞伎町だったかな繁華街をあっちで邪魔され、まわりの連中は好奇の目で見ている
それでも必死に目的地にたどり着いた
そして楽園のドアを叩いた
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