パトリック問題

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もってこいの人物になる 赤城はそれを利用しようと考えたんだ そのためには実家とトラブルを起こして追い出されたと言うような雰囲気を作る必要がある そこで飲み屋で暴れて警察に厄介になると言う一芝居させたんだ 警察沙汰を起こせば余計何かあると捜査員は勘ぐるからな」 「そう言う事ですか」 「問題は何故そこまで警戒するかだ」 「あくまで誘拐被害者を装うためでしょ」 「何故誘拐されたと偽装する必要があるか」 「ファンを失望させないため?」 「だったら最初から失踪事件は起こさない」 「遼子さんの目的がわからないと言う点ですか」 「目的はわかってる パトリックの復讐だ 問題はどのような方法でそれを実行しようとしてるかが皆目見当がつかない こんな事は初めてだ アメリカのFBIのプロファイラーでもお手上げだろう 全く見当がつかない 草苅暁がどこまで知ってるか いずれにしても鍵は赤城の空白の数年間だろう 赤城の人生は空白の数年間が実体だ 日本中の男を熱中させた赤城遼子と言うのはバーチャルタレントなんだ 魂の抜けたホムンルクスなんだ 赤城は人間に戻るため復讐するのかもしれない」 「とりあえず俺は何をすれば」 「まず、そのグラフィックとやら、俺の所へ送ってくれ 送り先はメールする それが終わったら今度こそ帰って休め」 「本居さんまで」 「だからよ、事件が動きはじめたらあの仏の入谷署長だって休みなんてくれねえんだから悪い事は言わねえから休みをもらっとけ いずれ刑事の休みの過ごし方と言うのを教えてやるから」 「あの~」 「なんだ」 「本居警部補って元霞ヶ関の人ですよね」 「なんだ今更」 「なんか平塚八兵衞としゃべってるような気がして」 「お前さんは平塚警視殿としゃべった事があるのか」 「あるわけないでしょう 警部補殿はどうなんですか」 「俺もない あの人が引退したのは三億円事件の時だぞ、お前さん俺をいくつだと思ってるんだ」 「すいません」 「あのさ、お前さん昭和好きだろう」 「なんですか藪から棒に」 「なんかそんな気がしたんだ なんか松坂桃李より坊主頭が似合いそうだ」 「昭和が好きって言うより平成から浮いてるんですよね」 「安心しろ、この国の捜査は未だに昭和だ お前さんには、ぴったりの時代錯誤の世界だ」
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