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行けるとなったら適当に作家会社に注文を出してストーリーを練ってもらう
それから適当にネットに都市伝説を流す
前からあったような操作をしてね
だってね、パワースポットなんて自分で裏取る心霊マニアなんていないでしょ
もちろん全部ウソじゃないですけど
胡散臭い業界ですよ
食っていかなきゃならないから
でもね、俺は本当の不思議体験をしてるんです
それもUFOを見たとか幽霊が写ったとかってレベルじゃない
複雑な気持ちわかりますか」
名高は今井がドイツビールに悪酔いして絡み始めたのを見て、何とか気をそらせる物はないかと店の中を見た。
すると店の二階への階段の横に店に不釣り合いなほど大きな液晶テレビがある事に気がついた。
スポーツを観戦するための物である事は間違いないだろう
ドイツ人はスポーツ、特にサッカーが大好きだ
だから、かなり小さな店にもサッカー観戦用の横長テレビが備わっている
フルシーズンになると馴染みの客がメルツェンビールを飲みながら大騒ぎでドイツを応援するのが目に浮かぶようである
名高はテレビを見たいと言うわけではなかったが出来上がってしまった今井の気をそらそうとボーイにチップを渡してテレビをつけるように頼んだ
テレビがつくといきなり画面一杯の顔が出た
それは男のレポーターの顔だった
どうやら事件現場からの中継らしい
それにしてもドイツ人には珍しい押しの強いレポーターである
『大変な事が起きました』
酒を飲んでいた今井も思わずテレビに着目した。
その途端テレビがスポーツ中継に変わった。
名高がボーイに抗議した
「君勝手にチャンネルを」
「これ前の録画です、新聞に詳しく乗ってますよ」
ボーイは新聞を開いて名高に渡した
名高はそれを一瞥すると急に怯えるような様子になった
そして声を上げて店を飛び出した
それを見て今井は驚き名高を追った。
しかし名高の姿はなく遠くで叫ぶ声だけが聞こえていた。
今井ははと気がついて店の中に戻った
店の中に入って安堵のため息をついた
テーブルの横のソファーにはバックが2つ並んで置いてあった。
「ここが東南アジアでなくて良かった」
今井はそう言うとバックのうちの一つを開いて中を確かめた
そして安堵した。
「先生きっとパスポートこの中だろうな」
今井はおそるおそる名高のバックを開けた。
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