パトリック問題

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中にあったのかもしれない 必ずしも法律的な問題とは限らない むしろ市民感情的な物かもしれない つまり事情が公になると市民感情が大きく動揺するような事情が事件の中にある場合、警察はマスコミに圧力をかけても事件を収束させたいと考えるだろう 市民感情は法律的にどうだとかで納得するものではない それだけに刺激するとかなりやっかいだ。 ずるずると長引いてしまう可能性がある ワイドショーなどで扱われた日には目も当てられない 今井が名高に近づいたのは、この疑問もあったからである その感情が名高の疑惑解明であったかどうかは今井自体にもわからないが今回の名高の態度が名高への興味を余計強めた しかし今はそんな悠長な事を言ってはいられない 名高を探さなければ東京に戻れない パスポートの入ったカバンを放り出して帰るわけには行かないのだ 宿でも決めてあれば、名高が戻って来るまで待つ事も出来るが宿も決まっていなかった そうなると、名高がここに戻って来るか、名高を探しあてるしかない 今井は最善の方法として、まつことにした。 名高が正気になれば戻って来るだろうし、拠点から離れてしまえばお互い迷走するだけだからだ しかし名高は戻って来なかった ドイツ語が堪能であれは、あんな大きな東洋人は珍しいから聞きこみがうまく行くかもしれないが早いスピードでドイツ語をまくしたてられたら今井の語学力では太刀打ち出来ない 自分が動きまわれば余計墓穴を掘る事がわかっている今井は店で待つ事にかけた 名高が正常に戻れば必ず戻って来るはずだ だがそのあと名高はどうやって取り繕うのだろうか 事情を何も話さずいられるだろうか だが一抹の不安も相変わらず頭をもたげた 名高はこのまま帰って来ないんじゃないだろうかと言う事だった だとすればここに残る意味はなくなる 今井は名高の衝撃がどれほどかわからないのでかえって恐ろしかった まさか思い余って自殺してしまうんじゃないだろうか 名高がいなくなれば、この正体不明な謎解きは終わる 東京に帰ってフェイクの動画を作って、それを流して、日々同じような日常が始まる キャバ嬢をからかったり、車を手入れしたり、そんな事をして給料日の決まった金を受け取り、ただ定年まで出勤を続ける 結婚はするかもしれないし、子供だって生むかもしれないがそれだって意味を感じない
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