パトリック問題

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じゃない マイロン開発はもともと既成路線だった サリンを使わせて事件を起こしたのは実験だ 不本意だがサリンの購入者達にその効果をデモストレーションする必要があった おかげでサリンは良く売れた その金で我々はマイロンの研究を続ける事が出来た」 「マイロンしか、マイロンしか壁をぶち破る事は出来ない 私にもそれはわかる 今まで我々のやったありとあらゆる方法が全て裏目に出た今となっては我々に残された方法はマイロンだけだ その気持ちがわかるから私はマイロン開発に全身全霊を傾けた しかし私の理論ではこの先どれほど時間が掛かるかわからなかった 費用もまだまだ莫大に必要とする だから私はこの研究のリーダーから降りたいと、もちろん責任をとって死ぬつもりだった 研究過程で出来た薬品は恩返しのつもりだった」 「しかしその薬品を見た途端グランドファーザーの態度が変わった」 「そうだ、この自殺薬をより高性能な物に改良しろと マイロン開発に使う予算を全てそこへ投入しろと あの人はマイロン開発そのものを断念してしまった この薬を使って敵対者を抹殺するつもりだろう自殺に見せかけて あまりにも短絡的だ そんな方法うまく行くわけはない あの人は変わっちまった あの人は今のキリスト教に対する憎しみで凝り固まってるように俺には見える 宗教改革なんてどうでも良くなってるんじゃないだろうか カルト教団の同じような考え方だ 邪魔者は消せ 俺はそんな情けない事を手伝いたくない」 「確かにあの人は焦っている しかし考えてみろよ 特殊な薬のせいで六十ぐらいにしか見えないが、あの人は百歳を越えてるはずだ もういつ完成するかわからないマイロンを待ってはいられなくなってしまったんだ」 「しかし敵を消して、一時的に信者を獲得しても長くは維持出来ない 今の聖書の教えが正しいと考えてる人間達は本当のキリスト教には違和感があるはずだ」 「だからあの人はマイロンを使いキリスト教の枢機卿や大司教を洗脳しようとした マイロンはサリンのように広域に散布する事も可能になるはずだ」 「突然何故あんなに変わっちまったんだ わからない」 「あの人がどこまで真剣に宗教改革をしたいのか不明だがプロテスタントやカトリックを憎んでる事は確かだ あの人はナチの軍人だった ナチは連合国に負けた理由を知ってるか
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