パトリック問題

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薬剤を取り出し注射に注入した。 「グランドファーザー、幹部会にも知らせずコソコソやってる最近のあなたが教団の結束をどう考えてるのか、いささか疑問だったが どうやらあなたはペテン師に落ちてしまったようだ あなたの考えてるペテンにバチカンやプロテスタントの最高幹部達がはめられるかどうかはわからないが、こんな手を使って満足してるようじゃあなたも焼きが回ったようだな あなたを目標にしてきた私としては少しやりきれない気持ちでいるのをあなたはわかってくれるだろうか そろそろけじめをつける時が迫ってるようだ その前に牙を剥いて来たメアを始末しなければ あの女を放ておくと厄介な事になる エリカには悪いが危険な目は早く摘んで仕舞わねば」 ドイツでは名高を探して疲れ果てた今井が重い足取りで歩いていた。 「だいたいなんで俺がここまでしてやんなきゃならないんだよ とんだ貧乏くじだ せっかくビッグなネタをつかんだのに 畜生、このバックを放り出しゃそれで済む事なのに それが出来ない自分のひとの良さが恨めしい」 その時後ろから来た若者に今井は名高のバックを奪われた 「おい、ここは東南アジアか なんて行ってる時じゃねえ 待てこのやろう 待てってドイツ語では とにかく待て」 今井はひったくりを追っかけた。 しかしひったくりは素早くてなかなか追いつけない 「誰か、そいつを捕まえてくれ ドイツ語じゃなんて言うんだ」 今井とひったくりの距離はなかなか縮まらなかった ひったくりは出発するバスに乗った バスは発車した。 今井はその場に立ち尽くした しかし猛然とバスを追って走り出した バスの進行方向に踏み切りを見たからである 遮断機さえ降りればバスは止まる それに望みをかけたのだ。 その目論見は当たった 踏み切りの信号がなるとバスは停止した。 しかし驚くべき事が起きた ひったくりはバスを飛び出すと踏み切りをくぐってしまったのだ あまりにもひつこい日本人に判断を誤ったのか、それとも、それほどひつこいなら大金が入ってるに違いないと思ってしまったのか いずれにしても無謀な挙に出た 今井はいよいよ追い詰められた 踏み切りを抜けられたら距離が大きく離れてしまい、間違いなく見失う 今井は何か投げてぶつけるしかないと思った しかしぶつける物と言っても
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