パトリック問題

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ろうが 何とか片言のドイツ語で看護婦と話してみると、それなりに通じた それによると倒れている今井を見て市民の一人が救急車を呼んでくれたらしい 今井はとりあえず警察官に確保されてない事でほっとした。 しかし安心はしていられなかった 看護師が言うには意識を取り戻したら医師が自分の所へ連れて来るようにと言ってたと言うのだ 事情を尋ねて来る事は間違いないだろう 嘘をつき通せるだろうか それに電車を止めたと言う事はかなり話題になってるはずであるから、不審な言動をすれば警察に突き出されないとは限らない 今井は周りを見回した 『良かった、2つともバックがあった』 今井は中を確かめた そして決意した。 『ここは逃げるしかない』 今井はいくらかの持ち金をベッドのそばに置き病院を抜け出した。 外へ出ると自分達がいた街とは全く違う 街にいる事に気がついた 『早くドイツを出よう 出てしまえば何とかなる ここにいたらとんでもない責任が降りかかって来る』 今井は名高の鞄を預かってる事が気になったが、もう名高どころの話ではなかった。 今井はタクシーを拾うとカタコトのドイツ語で空港へ行って欲しいと行った 予定より早くなるが、そんな事どうでも良かった 早く東京に戻りたかった 東京に帰りさえすれば謎の日本人と言う事でドイツの警察もあきらめるだろう もし誰かに顔写真や動画をとられていても警察が意地になって国際手配をするほどの事件ではないはずだ。 もう暗くなっていた。 車は帰還ラッシュにぶつかって渋滞気味になっていた。 ドイツも日本と同じで人々は同じサイクルで生活を好むらしい 『しかし渋滞も一緒とは』 車はつっかえつっかえしながら走っていた。 早く日本に戻りたい今井はイライラしていたが、こればかりは仕方ない しかしある場所に行くと車は完全に停止した。 運転手も異常に気がついた。 運転手は車を降りて様子を聞きに行って帰って来た そして気の毒そうに言った 「お客様、申し訳ありません、どうやら警察が検問しているようです」 「検問?銀行強盗でも?」 「くわしい事はわかりませんが何か事件があったようです テロ関係だったらパスポートとか調べられるかもしれません」 ドイツはイスラムテロが起こるので検問はかなり厳しい 特に外人に対しては疑いの目を持つだろう。
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