パトリック問題

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その人間関係がどうだろうと関係はない 親子間だろうが長年連れ添った夫婦だろうがそんな事はどうでもいい、暴行があれば暴行犯だ。 ただ地域の巡査や派出所は地域住民と上手くやって行かなきゃならない そのためには痴話喧嘩で亭主が女房を殴ったなんてのをいちいち事件として取り上げてたら上手く行くわきゃない そこでいいわいいわになってるだけの話だ だから当然暴行犯は逮捕出来るし 大人しく従わないなら、こういう洒落た事も出来る 本居は男に手錠をはめた。 男以上に驚きを見せたのはパートナーの女だった 女は泣き出さん顔で言った 「許してやって下さい」 本居は言った 「まあ、こちらも鬼と言うわけじゃないし、事情をちゃんと説明してくれれば引き下がってもかまわない 何事もせいいが大事だからね ちょっと入っていいかな」 男は言った 「どうぞ」 本居は部屋に図々しく入って行った。 「今お茶を」 気を利かして女が部屋を出ると本居は小声で男に言った 「見逃してやる条件なんだが あんた赤城遼子を知ってるな 男は感情を見せたが平然と振る舞って言った 「そりゃ有名な女優さんだから」 「そう言う意味じゃなくてさ あんたとの因縁の話だよ神父さん」 その時女が茶菓子を盆に乗せて部屋の入り口に来た 本居は言った 「聞かれていいのか」 男は言った 「悪いな真知子、少し外で飲んでてくれないか 俺のつけで」 「だけど大丈夫なの」 本居は手錠を外して言った 「大丈夫ですよ 少し話を聞いたら帰ります お茶はいいです」 女はドア越しなので様子がわからないのが不満のようだが無理に知ろうとはしなかった。 過去のある男女が一緒に住むについて、それは最小限のルールなのかもしれない 「お茶とお菓子ここに置いときますから じゃあ私馴染みの店で飲んでるから、あんた終わったら迎えに来て」 「ああわかった」 本居は言った 「奥さん、渡り廊下に図体がでかくて人相の悪い男がぼったってるけど無視してやって下さい」 「わかりました」 女が出て行く音がした。 本居は言った 「いい女じゃないか」 そして指を鍵形にして言った 「どこでひっかけた」 男は呆れた顔で言った 「はあ?」 「冗談冗談 今から二十五年以上も前、ある少女がいた。 その少女は稀に見るほど
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