パトリック問題

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「大丈夫です 心配しないでください」 本居は言った 「それは頼もしい」 真壁はしかしやはり不安のようだった 「あれ、署長は」 本居が言った 「あそこだ」 入谷はわずかな敵の隙をつき敵の背後に回っていた。 敵がきずいたときは遅かった 瞬く間に敵は地面に沈んだ 本居は言った 「もう終わりか」 「一人ぐらい残した方が良かったか」 「こいつらはおとりだ 周りを囲まれたぞ」 真壁が言った 「何も見えません」 「今度のは甘くない 一度に襲いかかるチャンスを狙っている」 入谷が言った 「本やん、リーダーがいるはずだ そいつを教えてくれ」 「気配だけでか」 「示現流免許皆伝だろ」 本居は気配を探った 『リーダーは見渡せる場所にいるばずた すると高い所か』 本居は気配を探り始めた 先祖に偉人を持つ本居は子供の頃に祖父の元で育てられた 祖父は本居に教養ととも武芸をたしなみとして教えた 最終奥義のうんようの太刀を会得したとさえ言われる祖父は子供の本居に一日中海辺や河辺に座らせ座禅させた 全く意味がないと思われた行為だが学校に入って剣道を正式に習った時効果が現れた 普通に立ち会ってる時はそうでもないが 相手が死角に入った時、相手の存在が伝わって来るのである やがて剣が上達して来ると目で見ている部分より見えない部分の動きの方が正確に認識出来るようになった 音や、わずかな空気の流れの変化を感じるほど皮膚の感覚が研ぎ澄まされたせいである しかしそれだけではとどまらなかった ある程度距離をおいた人間の存在を身体の中の何かが感じるようになった 気配を会得した瞬間だった 本居は高い部分に目を配った 辺りは街灯の明かりの他は遠くに見える団地や商店街の明かりがあるだけで薄暗い 物陰に隠れるにはうってつけだ 赤外線スコープを使って隣のビルから狙撃して来た連中だ 当然暗がりからスコープを使ってこちらを見ているに違いない 狙撃して来ないのは一人でも逃せば後はどこかに立てこもってしまうからだろう そうなったら狙撃は出来なくなる 確実に仕留めるには白兵で包囲網を作った方がいい 狙撃をするのは不意打ちか逃げ場の限られた場所にいる時を狙うはずだ
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