パトリック問題

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突然リーダー格は揺れを感じて足を滑らせそうになった 下を見ると入谷が木に体当たりをかましていた。 下の振動は細い部分に大きく響く 木を登るには多少なりとも支障があった それに、いずれにしても真下にいられては都合が悪い狙撃するかどうかリーダー格は迷った なぜなら今回の目的は本居達を脅す事にあったからだ 最初のミッションには元神父の殺害も予定に入っていなかった しかし元神父が本居の説得に心を動かしたため抹殺に切り替わった 元神父を抹殺する事で本居達に警告を発する目的もあった しかし逃げて来た人間の情報により元神父が懺悔録を残していて、それを本居達に渡そうとしている事が判明してからは状況が変わった 雇い主から何としてもそれを奪取するように指示を受けたのだ。 雇い主の言うには手段は選ばないと言うニュアンスだったから殺して奪う事も視野に入っていた もちろんそれは手におえなればと言う話で ろくでなしの元神父と現役警察署長、有名捜査官、元トップアイドルを殺すのでは重みが違う 警察組織も黙っていないだろうし、メンツがメンツだけにネタに飢えてるマスメディアが黙っていない 必ず問題が大きくなる そうなったら雇い主は責任を追求して契約を解除して来るだろう それだけならまだしもとかげの尻尾切りよろしく責任を全てこちらに押し付けて処理するかもしれない 強力な政治力を持っている組織だから事実の隠蔽などやってのけてしまうはずだ リーダー格は狙撃に躊躇した。 しかしこのままではミッションをしぐじってしまう それはリーダーとしての自分の評価にかかって来る とにかく威嚇射撃だけしてみよう リーダー格はハンドガンを取り出し下で木に体当たりを繰り返している男に対し威嚇するため狙いを定めた 目標が動いているから狙撃自体が難しいのに、威嚇と言えども簡単ではない 上から下を俯瞰しているわけだから目標物は小さくなる その上激しく動いている しかしリーダー格には自信があった この距離なら絶対外さない いや、当ててしまう事はない リーダー格は余裕たっぷりに引き金を絞った 次の瞬間リーダー格は恐怖に身体が凍りついしまう事になる。 リーダー格はその目を疑った 『バカな、奴の鼻先を弾丸が掠めたはずだ 微動だにしないのは何故だ』 銃弾は確かに発射され入谷の鼻先を掠めて
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