パトリック問題

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審議官と相談してだな」 「そんな悠長な事してる暇はありません それに、審議官と相談すれば官房長に情報が漏れる可能性が大きいです 官房長はこの件について妨害して来る可能性が高いんです」 「では私の独断で警視庁刑事部長にシットの出動要請をしろと言うのか本居君」 「私が見る所によると刑事部長は東大閥のところてん人事でポストを手に入れた警察官としての矜持(信念)のかける人です 警視監で長官コースにいると言われるあなたが一喝すれば必ず従います」 「しかしもし何も起こらなかったらどうするんだ」 「おそらく責任を取らされてあなたは長官レースからリタイアでしょ」 「簡単に言うな 人をなんだと思ってんだ」 「しかし起こったらどうするんですか 新宿駅北口のコインロッカールームが爆破されたら、どれだけの被害が出ると思ってるんだ あんたその責任取れるんですか」 「本居(もはや呼び捨て)貴様天下の刑事局長の私を脅迫するつもりか」 「失礼はお詫びしますが、ここで保身に走りまた後悔なさらないように」 「後悔とはどういう意味だ」 「おや後悔なさっていらっしゃらないんですか 先日ですが私は赤城遼子の件について、謝罪会見を開くのは止めるようにアドバイスしましたよね あの時私の指示に従ってくれれば警察はこれほど追い詰められる事はなかったはずだ しかしあなたは私の要請を無視した」 「あの時はどうしようもない 上の方針だ」 「しかしあなたはハナから取り上げなかった それについて責任を感じてないんですか 今回も保身に走るのか、それならこちらも考えがある」 「どういう意味だ」 「とにかく何のためのキャリアですか 何のためのポストですか あなたは日本の刑事警察の最高責任者だ 行く帰るもいばらの道なら、警察官としての矜持を示して下さい」 「とにかく不愉快た 切るぞ」 刑事局長は一方的に電話を切った 入谷がおっかなびっくり言った 「本やん、ついにやっちゃったな」 「次の定期移動で八丈島かな これから釣りのシーズンだし」 「何を悠長な事言ってるんだ」 「降格されると巡査部長か」 「降格は理由がないが、とにかく謝罪の電話をかけろ 君は大人になってない 長い物にはまかれる物だ」 「署長慌てるな まだ勝負はついちゃない 謝ったらこっちの負けだ」
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