パトリック問題

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「そんな無理な意地を通したって 斧に蟷螂だろうが」 「俺があの時の顛末をマスコミにチクったらどうなる? 少なからず局長は弁明しなければならなくなる 長官レースに減点の要素になる」 「そんな事やるつもりか 相手は中学の先輩だろう?」 「やらないさ しかしやるかもしれないと相手に疑心暗鬼にさせる事が駆け引きには必要なんだ」 「天下の刑事局長相手にはったりをかますとは狂ってるのか肝が太いのか」 しばらくすると入谷のケータイに電話があった 「あれ、まさか今時ワン切りか」 「とってみろよ」 入谷は渋々取った 「はい、局長殿ですか 何で私のケータイ番号を いえ、大した事ではありません いいです はい伝えればいいんですね」 入谷は電話を切った 「シットを向かわすそうだ 刑事局長を脅迫しちまったな」 「失礼な事を言うな 最後はあの人が決断した事だ 警察官の矜持に従ってな この上は奴らがひと騒ぎ起こしてくれるのを願うだけだ でないと俺達は大きな後ろ盾を失う事になる」 「奴ら動くかな」 「失敗の危険を冒しても何もしないわけいかないだろ 雇い主への手前」 「それから、局長が、これから俺を頼りにするなと」 「それは聞けないな 捜査員の後ろ盾になるのが警察官僚の義務でしょうが 踊る大捜査線見てないのかな 責任を取るのがキャリアです 名言だね」 「君だって元キャリアだろう」 「他人の責任を取りたくないから文部省をやめたんだ 止めて正解だったね」 「勝手な奴」 やがて新宿駅北口(実在しないが作品によく出る出口、東口の上辺りを想定)の前についた、物々しい警察の特殊車両が数台が到着していた。 門番のように歩哨しているタクティカルベストにヘルメット、強化ブーツで身を固めた数人の隊員を見て入谷が言った 「初めてシットを間近で見た、やっぱりすげえなあ」 「サット(警視庁警備部の特殊部隊)シットは世界の特殊部隊ランキングの上位に入っている 隊員たちも警視庁四万の警察達の中でも精鋭中の精鋭だ 日本は犯人を原則射殺しないと言う縛りがあるんだから射殺上等のスワットより任務の続行は困難を極める」 そんな話をしているうちに隊員の一人が近づいて来た 隊員が言った 「北口は公務により閉鎖中です 申し訳ありませんが他の口へお巡り下さい」
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