パトリック問題

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警察庁の威信を取り戻すため警察全力で警視庁のカルト教団事件を最優先でかつ最速で解決する そして極秘に各地方局長、各地方本部長に通達がなされる それは以下の内容だった まず一つ、警察組織全体を持ってカルト教団を捜索するため、教団の施設を管轄を持つ各地方本部は専門の捜査員を確保する事、教団の施設を管轄しない地方本部は全力で人員や情報提供で協力する事 2つめ、警視庁のカルト教団を孤立させるため、他の宗教団体を味方につける必要がある そこで断腸の思いであるが重要性のない、民事性の強い宗教トラブルについてはしばらく警察は介入しない事 また宗教絡みの事件においては動かぬ証拠がない限り強制捜査は控えるかしばらく先延ばしにする事、教団関係者の逮捕身柄の確保は、それしか方法がない場合のみ行う事、別件逮捕や別件拘留は控える事 脱税については国税庁の捜査を全面に出し、警察組織は黒子に徹する事 この通達が表沙汰になれば物議をかます事は明らかだった 長官はこの時退陣を覚悟していた 物腰の柔らかい文官タイプの男だが信念は誰よりも強かった それが故に悲壮な覚悟が見えていた。 しかしこの決定は各地方警察本部を大きく動揺させた 宗教関係の捜査からはなるべく手を引けと言う下命なのである そして一番動揺したのは北海道警だった 一つ一つを検討するとブローカー殺人の捜査はかなり足かせをかけられてしまう まず、捜査を先延ばししろと言う命令だが、詐欺や脱税と違い殺人事件は時間とともに証拠が逸失しやすい また別件逮捕別件拘留を控えろと言われるとブローカー殺人の直接の証拠がないため教団立ち入りのための突破口がなくなってしまう 命令を守れば手も足も出なくなり捜査は中断、場合によっては終了と言う状態にならざるを得なかった。 この当時各地方本部は警視庁の追っているカルト教団がどんなに危険な物かわからなかったので各地方本部から反発の火の手が上がった。 特に神奈川県警の初動捜査の判断ミスが、弁護士失踪における大テレビ局の大チョンボにかかわる事をなあなあにするため手心を加えた疑惑が警察組織内に広がると、その失敗の尻拭いのため自分達の活動に制限を加えられるんじゃたまらないと捜査現場からの不満が噴出し各地方本部の上層部は下からの突き上げに手を焼いた しかし警視庁のカルト教団の地方組織の捜査をしぶしぶ行った、
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